20年ぶりの日本一は「涙の輪」となった。日本シリーズ第6戦、ヤクルトが延長12回の激戦を制してオリックスを破り、6回目の日本一を勝ち取った。勝利の瞬間、ほっともっとフィールド神戸のマウンド付近で、ナインが集まって喜び合ったが、笑顔が並ぶなかで、主力選手の多くが、目に涙をためていた。

 背番号55が背中を振るわせ、大粒の涙を流した。村上 宗隆内野手(九州学院出身)はプロ4年目の今季、39本塁打で本塁打王のタイトルを獲得した。通算100号と100打点は史上最年少でのマーク。セ・リーグの記録を塗り替えてチームを引っ張り、優勝へ導いた。不動の4番としてポストシーズンに挑み、日本シリーズで貴重なアーチを2本放って、日本一を勝ち取った。21歳の若者の笑顔がはじけると思ったが、逆だった。本人以外は計り知れないほど、重圧がかかっていたのだろう。4番として、本塁打王として打たなければいけない。プレッシャーと戦い、くじけそうになりながらもバットを振り続けた。達成感、解放感、安堵感…。想像がつかないくらいの重圧が日本一に変わった瞬間、涙腺がゆるんだ。

 3番を打った山田 哲人内野手(履正社出身)も泣いていた。シリーズ序盤は当たりが出ず苦しんだ分、喜びのしずくがほほをぬらした。マスクを被り続けた中村 悠平捕手(福井商出身)も目にいっぱいの涙を浮かべた。MVP獲得のインタビューでは最初は笑顔いっぱいだったが、最後は感情を抑えきれず、声をつまらせた。オリックスとの毎試合熾烈な戦いのなか、1点もやれないしびれる展開で投手陣をリードした。すべてが報われた。

 そして、第6戦の勝利を、日本一をチームに導いたベテラン川端 慎吾内野手(市立和歌山商出身)も顔をくしゃくしゃにして涙した。延長12回代打で登場し、前進守備の左翼の前に落とす執念の適時打で勝ち越しをもたらした。今日本シリーズ初安打が最高の仕事となった。2015年。首位打者を獲得して迎えた日本シリーズではソフトバンクの投手陣の前に、思うような結果が残せず日本一を逃した。代打のプロとして輝いた今年、あの悔しさが報われた。

 昨年、最下位からの優勝、そして日本一。まさに「下剋上」を成し遂げたナインのフィナーレは涙のシーンで幕が閉じた。初戦で好投したヤクルト奥川 恭伸投手(星稜出身)も含めて、ヤクルトの黄金時代到来の予感がする。涙の日本一からの新時代。ヤクルトはまだまだ強くなる。