第114回 夏の全国高校野球が中止の方向で検討されているという中において2020年05月18日

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[1]高校野球の決定の一つひとつは重たい

高校野球の決定の一つひとつは重たい



 日本高校野球連盟から、正式に夏の大会がどうなるのかという発表があるのは20日と事前の告知があった。ところが、それにもかかわらず、一部メディアからスクープ的に「夏の甲子園中止」という記事が、先行して報じられた。
 現実には、メディア各社の中での探り合いも含めて、どこかが「抜く」形になったらマズいということで、事前の推察報道ということで足並みを揃えたのではないかと推察される。

 ただ、いずれにしても、現実問題として「夏の大会は正常開催は厳しいのではないか」という覚悟をしているのも確かであろう。現場の指導者や現場の都道府県高野連の役員の人たちにしても、オフィシャルには口は出さないまでも、認識としては前提としていたところではあろう。というのも、何人かの指導者たちに、現状を電話などで聞いていく中でも、(夏の大会は)難しいかもしれないという意見は多かった。

 「正直(夏の大会の正常開催は)、厳しいと思います。だけど、夏の大会がないかもしれんぞということは、現場を預かる者から、正式決定が出ていない中で生徒たちに言うことは出来ない」

 それも、現場の指導者としては正直なところであろう。
 だから、高野連を含めて様々な関係者たちがギリギリまで、「やれる可能性を求めて、どうしていくのかということに尽力する」という姿勢は、あるべき形だと思っている。そして、その上で最終結論として、「大会中止」となった場合に、次の対策としてどうしていくのか、ということではないのかと思っている。

 ある意味では、危険回避ということも含めて、「中止決定」というのは、最も安易な選択なのである。それを、早々と決めてしまうのか、最後まで可能性を求めて、その上で「やっぱり難しいので中止とした」というのでは、同じ中止という決定でも、その重みが違う。

 「早く決めてあげないと、選手たちも可哀想」などと言う意見も出ているのも確かだ。しかし、現実にはギリギリまで可能性を求めていく姿勢に共鳴して、その中で選択された結論によって動いていくという決定の方が納得いくのではないだろうか。
 今の時代、メディア報道や現象に対しての個々人の発言もインターネットなどで、匿名で安易に発信出来る時代になっている。だから、余計に過激な意見や同調圧力的な意見、あるいは現状に対しての批判だけが独り歩きしていく傾向もある。

 そして、そんな社会を見据えつつも、何らかを伝えていく立場の人間としては、それらも踏まえての発言もしていかなくてはいけない。それも一つの責任だと思っている。
 歴史的なイベントであり、一大国民行事となっている高校野球をメディアで語るということは、大きな責任もある。100年以上の歴史を経て、改革も求められてきた高校野球。今年は新たに球数問題や試合日程の見直しなども含めて、多くの高校野球関係者たちが、次世代へ向けての提案も含めて、さまざまな提案をしていたところでもあった。

 ところが、今回の新型コロナ騒動によって、未来永劫続いていくと思っていた高校野球そのものが、岐路に立たされたとも過言ではないくらいの事態かもしれない。さらには、社会的には学校制度として9月入学案なども検討され始めている。そうなってくると、これまで当たり前に思っていた現象そのものが当たり前でなくなっていくことになる。もちろん、大会のあり方そのものも再度検討していかなくてはならなくなっていくであろう。

 ある人に言わせれば、「たかが高校野球」かもしれない。
 だけど、その一つひとつの歴史が、多くの人の心を掴んできたことも確かである。一つの試合で励まされた人もいたであろう、勇気を貰った人もいたであろう。それは、それだけの価値があったからなのだ。だから今、こうした状況の中で、高校野球がどうなるのか、どうするのかということを議論していく価値は大いにある。それだけは言えると思う。

 日本のスポーツ文化という根幹からも、高校野球の一つの決定というのは、大きくて重いものがある。それは、部活動として「野球だけは特別」ということではなくて、背負ってきたメディアも含めたスポーツ文化の歴史の中でも、そういう判断が必要なのだという理解をしていく方がいいのではないだろうか。
 だから、高校野球の決定の一つひとつは重たい。そんな思いで最終結論を待ちたい。

(記事=手束 仁

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
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