目次

[1]繰り返される呼吸という動作/自然な呼吸と体のチェック
[2]腹直筋を鍛えすぎると呼吸を妨げる/息を吐くことをサポートするエクササイズ

腹直筋を鍛えすぎると呼吸を妨げる



体幹トレーニングでは息が漏れないように腹圧を高め、丸太状態を目指したい

 多くのスポーツでは体幹部分を鍛えることによって、パフォーマンス向上に役立つと考えられています。野球ももちろん体幹部の安定がパフォーマンスの向上につながると考えられますが、一方でただやみくもに「腹筋」を鍛えているだけでは、自然な呼吸にとってマイナスに作用することもあります。皆さんが鏡を見てお腹周りをチェックする?ときには、腹直筋といわれる体表面の状態を見て、「腹筋が割れているとカッコイイ」と感じるのかもしれませんが、体幹を鍛えるということは腹直筋だけではなく、その周辺にある内腹斜筋や奥にある腹横筋といった筋肉も鍛える必要があります。体幹部は固定させることと同時にしなやかな動きを実現させることが必要であり、胸郭と骨盤の間にある筋肉は「つっかえ棒」ではなくゴムのようにしなやかさを持ち合わせる必要があるからです。

 腹直筋を過度に鍛えると、やがて呼吸による肋骨の動きを妨げるようになり、肋骨が開いた状態のままでは十分に息を吐けなくなってくるからです。息を十分に吐くことができない状態が続くと交感神経優位の状態となり、痛みに敏感になり、コンディション不良を引き起こしやすく…といった悪循環におちいるリスクが高まります。上半身を鏡に映して見るべきものは「腹筋の割れ」ではなく「肋骨の状態」であると覚えておきましょう。

息を吐くことをサポートするエクササイズ

 呼吸は声を出す、ふーっと息を吐く等の意味を持つ「呼」と文字どおり「吸う」という二つの漢字から成り立っており、まず息を吐くことが先にあります。息をしっかり吐くためのエクササイズとしては広背筋のストレッチ、胸や首の筋肉をゆるめるためのストレッチなどから始めてみましょう。広背筋のストレッチは立位でドアノブなどを使って腕を前方に伸ばし、そこから背中を丸めるようにして広背筋を伸ばすように呼吸を繰り返します。肩後方部から脇にかけて息を吐くたびに外壁がポロポロとこぼれるようなストレッチ感が得られると思います。また胸や首の筋肉をゆるめるためにはバンザイした状態で十分に体を反らせたいのですが、これはバランスボールがあればその上で行ってもよいですし、できる人はブリッジを行ってもよいでしょう。

 またもっと手軽にできるものとしては風船をふくらませることです。試合前の緊張した状態でも風船をふくらませてしっかり息を吐ききることで、緊張をゆるめる作用も期待できます。ポイントとしては息を吐ききったときに風船の口を指や手、歯などで抑えないこと。吸うときは肩をすくめたりしないようにすることです。実際にやってみると簡単そうにみえて意外とむずかしく、息を吐き切れていなかった事実に驚かされます。

 呼吸は普段から行っているもので、エクササイズ自体も自宅でできるものばかりです。日頃のセルフコンディショニングの一つとしてぜひ実践してみてくださいね。

参考書籍)「「呼吸力」こそが人生最強の武器である」大貫崇・著/大和書房

【息を吐いてコンディションを整える】
●呼吸は1日約2万回以上にもなり、不自然な呼吸はコンディション不良の一因ともなる
●息を十分に吐くことができないと交感神経優位になり、体全体が緊張状態に
●自分の体で呼吸状態をチェックしてみよう(肋骨の状態、頭の位置)
●腹直筋に執着しすぎると自然な呼吸を妨げることもある
●息を吐くこと、吐きやすくするためのエクササイズを実践しよう
●自宅でも実践できる呼吸エクササイズを取り入れよう

(文=西村 典子