第261回 息を吐いてコンディションを整える2021年01月15日

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【目次】
[1]繰り返される呼吸という動作/自然な呼吸と体のチェック
[2]腹直筋を鍛えすぎると呼吸を妨げる/息を吐くことをサポートするエクササイズ


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 新年を迎え、皆さんいかがお過ごしでしょうか。2021年も野球にたずさわる皆さんに少しでも役立つ情報がお届けできればと思っています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて今回は私たちが普段は何気なく行っている呼吸について取り上げてみたいと思います。呼吸は生命を維持するために必要不可欠なものですが、実は体のコンディショニングについてもさまざまな影響を及ぼすことがわかってきました。呼吸を見直すと体にはどのような変化がもたらされるのでしょうか。

繰り返される呼吸という動作



呼吸は心身のコンディションを整えるという役割も持ち合わせている

 私たちは1日何回呼吸をしているかご存じですか。もちろん個人差のあるものですが、人間は1分間におよそ15回呼吸を繰り返すといわれ、これを1日に換算すると2万回以上にもなります。これだけではピンとこないかもしれませんが、例えば肩をすくめるシュラッグ動作を2万回繰り返したと想像してみるとどうでしょうか。

 とてもじゃないですが2万回続けて行うことは難しく、肩周辺の筋肉はパンパンに張って肩こりや頭痛などを引き起こすかもしれません。これが呼吸をするたびに肩を上下に動かすような動作を伴っていたとすると、本来の姿勢は崩れ、体のあちこちで痛みが現れたり、野球の動作に少なからず影響を及ぼしたりすることが想像できると思います。

 呼吸は生まれたときから現在まで自然に行っているものですが、呼吸に問題が生じるようになると体の中でさまざまな変化が生じます。特に呼吸を支える主な筋肉である横隔膜は、息を吐くときにゆるまなければならないのですが、緊張などによって横隔膜がゆるまなくなってしまうと息を十分に吐くことができないといったことが起こります。息を十分に吐けない呼吸では、どうしても息を吸う時間が長くなってしまい、自律神経の一つである交感神経が優位に働いて体がさらに「緊張状態」となってしまいます。

 自律神経は交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)によって制御されていますが、常にアクセルをオンにした状態は、刺激に対して過敏に反応するため、痛みを感じやすくなります。毎回呼吸をすることによって「痛みを感じやすい」「コンディション不良を起こしやすい」体へと近づいているとしたら…まず見直すものは呼吸ということになります。特に慢性的な痛みを抱えている選手はぜひ呼吸を見直すようにしてみましょう。

自然な呼吸と体のチェック

 呼吸は常に行っているものであり、すべてが理想的なものになることは不可能です。ランニング後は「はぁはぁ」と肩を上下に動かして空気を吸い込もうとしますし、時には驚きなどで「息が止まる」といった場面があると思います。そういったイレギュラーな呼吸があることを理解した上で、日常生活で無意識に行う呼吸について確認してみましょう。自分の呼吸がどのようになっているかを知るには、鏡を使って自分の体を見てみることがわかりやすいと思います。入浴前などに鏡に上半身をうつしてみて、肋骨の位置と頭の位置を見てみましょう。服の上から肋骨の位置を触ってみることでも構いません。

 肋骨がポコッと張りだした状態でお腹と明らかに高さに差が見られる場合は、「うまく息を吐き切れていない=息を吸った状態」が今の自然な状態になってしまっているということが考えられます。また頭の位置が明らかに前方につきだした状態はいわゆるストレートネックと呼ばれる状態で、呼吸においては首周辺部の筋肉をより多く動員してしまう傾向があります。不自然な呼吸を繰り返すことによって首や肩周辺部の筋肉が緊張し、コンディションの不良を引き起こしやすいと考えられます。

《チェックポイント》
・肋骨がボコッと張り出した状態になっていないか
・頭が前方に突き出たような姿勢になっていないか

【次のページ】 :腹直筋を鍛えすぎると呼吸を妨げる

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プロフィール

西村典子
西村 典子 トレーナー
  • ■ 生年月日:1970年12月5日
  • ■ 出身地:大阪府
  • 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。

    一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。

    現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。
  • ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    ・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
    ・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
    ・日本スポーツ整形外科学会会員 等
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