坂口翔颯(國學院大)、久野悠斗(明治大)

 昨年秋の近畿大会の決勝戦で熱戦を見せたことで、2023年の高校野球を牽引していく期待が膨らんでいる報徳学園(兵庫)。全国有数の強豪校として、聖地・甲子園でいくつもの名勝負を見せ、プロ野球選手も多数輩出している。

 最後に甲子園出場を果たしたのは2018年夏。広島・小園 海斗内野手を擁して、ベスト8まで勝ち上がったのを最後に、甲子園から離れている。近畿大会準優勝で2023年のセンバツ出場の可能性が高く、5年ぶりの聖地出場が期待されている。

大学以上のステージで活躍できる土壌

 環境が大きく変わり礒野部長にとっては手探りで、成功するか不透明だったが、「坂口(翔颯)がぐっと伸びてきて、自分の中では成功体験ができました」と、國學院大で主戦力となった坂口の成長を通じて、新たな指導に自信が持てるようになってきた。

 自信はより深まる。坂口の1学年後輩にあたる久野 悠斗投手(現明治大)が、坂口らの背中を追いかけて、トレーニングの精力的に取り組んで成長した。「良い形で継承されてきて、徐々に手ごたえが出てきました」と確信に変わり始めてきた。

 それはパフォーマンスだけではない。礒野部長は「自分で練習できる、自立した選手が一流だと考えている」という大角監督の意思も反映して、1月、2月だけは練習メニューを選手たちが決めるように指導している。練習メニューをいくつか提示した状態から、選手たちが考えて選ぶ形だ。

 やらせる、こなすだけの練習をさせない配慮だが、久野たちの世代は、これまでにない練習風景があったという。 「久野たちは自分たちが指導者役になって、下級生へ積極的に指導していましたね。彼らは高い意識を持ってトレーニングをずっとやっていたので、『教える機会を作ると、役立つかもしれない』と思っていましたが、それが大学で役立っているのではないでしょうか」

 坂口、久野以外でも、中京大・森 新之助投手、京都産業大・田村 剛平投手も早々にリーグ戦デビューを果たした。報徳学園での3年間を糧にして、上のステージで花を開かせつつある教え子たちの活躍に、少しうれしそうな表情を見せつつ、自信を深めていた。

 同時に、「榊原(七斗)たち2022年のチームも、先輩の背中を見て同じように取り組んでくれたので、今では練習をさぼったり、楽したりする選手は減ってきました」と、互いに切磋琢磨して練習する理想的な練習環境ができつつあるようで、「指導することが段々減ってきました」という。

選手ファーストを貫きながら、結果を残せるか


盛田 智矢(報徳学園)

 現在は投手に特化したウエートトレーニングのメニューをトレーナーに依頼。筋力と技術を結びつけるフィールドドリルを礒野が考案するなど、分業制を敷いて練習の質を高めている。

 効率的にレベルアップに結び付けているが、これは新入生にも当てはまる。いくつかのチームに分けて練習メニューを組むため、新入生が来ても、レベルに合わせたメニューを組める。以前までは全員が同じメニューをやっていたため、「全く違うメニューを提示していた」と体力のない新入生だけ組んでいたという。

 ただ現在は、回数を調整するなど強度を落とすことで同じメニューを組める。そうすると、新チームに移行しても、メニューを1から教える必要はなく、ただ強度を高めるだけでいい。スムーズに練習が進められるメリットもあった。

 エース・盛田 智矢投手(2年)は、「1人1人見てくださるので、レベルアップができる環境だと思います」と、現在のチーム環境の良さを話し、選手たちにとっても有意義な日々を過ごせている。

 4年前に刷新したトレーニング重視の投手育成。魅力的な取り組みだが「最後の夏の甲子園に出られるかどうか、ここで評価が出来ると思います」と礒野部長は結果を求めることは忘れない。ただ、選手の将来を思う一面もある。

 「彼らは高校野球で終わるわけではないので、上のステージを考えると、技術や土台づくりをしっかりやることは大事にしています。その結果、最後の夏にピークが来たら、選手にとって幸せかなって思っています」

 

 相反する2つの要素だが、もし2023年で結果を残すことができれば、両立できたと証明できるはずだ。甲子園という舞台で結果を残し、全国に知らしめることができるか。大きな意味を持つ1年となりそうだ。

(記事=編集部)