目次

[1]「日本一小さな(自称)グラウンド」
[2]大阪桐蔭にリベンジへ 144キロ右腕を支えるこの夏のキーマン


 昨夏8強、今春16強と強豪揃いの大阪において新たに頭角を現してきた大阪電通大高。今夏の大阪大会では春夏通じて初の甲子園出場を目指している。ここ数年で力を付けてきた同校の環境や取り組みに迫った。

「日本一小さな(自称)グラウンド」


 大阪電通大高があるのは大阪府守口市。校舎の敷地内にグラウンドがあるが、約60m×約40mの広さしかない。部のInstagramとTwitterのアカウントには、「日本一小さな(自称)グラウンドから甲子園を目指しています」と書かれている。

 取材日は2チームに分かれて内野ノックを行っていたが、少しの不注意でぶつかりそうになるほどスペースに余裕はない。土日は大学のグラウンドを使用することができるが、平日はずっとこの環境で練習している。曜日によってはラグビー部やサッカー部と兼用になることもあり、その際はより場所が限られてしまう。激戦区の上位校とは思えない環境で大阪電通大高の選手たちは野球に取り組んでいたのだ。

 チームを率いるのは同校OBで、25歳の岡野 穂高監督。大阪体育大2年生の頃から母校の指導に携わっており、一昨年の秋から監督を務めている。自身も高校時代に同じグラウンドで練習していた岡野監督はこの環境で選手が育つ秘訣を次のように語ってくれた。

「今まではグラウンドがないことを悪だと思って練習してきましたが、最近になって逆にグラウンドがないことを良い風に捉えることを選手も指導者も感じることができてきました。もちろん、守備練習や実戦練習は満足にできませんが、逆に年中バットを振ることができるので、スイングスピードは自ずと上がってきます。対応力はまだまだ試合をしてみないとわからない部分がありますが、割り切ってバットを振る、体力をひたすらつけるということを重んじてやってきたので、そこが少し結果に繋がっているかなと思います」

 実戦練習の機会が限られている分、個々の能力を伸ばすことに注力することができる。「基礎練習に力を入れることができるので、どこのチームよりスイングをしている自信はあります」と話す中村康輔主将(3年)。取材日もティー打撃にミドルティー、ミニボールを使った打撃練習などボールを打つ練習を多く行っており、数はこなせているという印象は受けた。限られた練習環境を嘆くのではなく、できることを探してそれに集中して取り組むというやり方で大阪電通大高は力を付けてきた。

 また、近年の好成績で部員数も増えており、今年が3学年で87人の大所帯となっている。グラウンドが狭いことに加え、ウエイトルームも決して広くはないため、他校と同じような練習メニューを組むことができない。だからこそ打撃練習で飛びにくいミニボールを使用したり、校舎の隅で1キロの縄跳びを行うなど場所を使わなくてもできるメニューを組むことを岡野監督は意識している。

 今年に入ってからはInstagramとTwitterのアカウントを開設。投稿は岡野監督が行っている。SNSで積極的に情報発信をしていることにも理由があると岡野監督は明かしてくれた。

「うちの子たちは中学生の時にあまり試合に出ていなかったり、注目されてない子が多いので、SNSを活用して常に注目されている状態を作りたいかなと思っていました。SNSをすることによって、常にカメラを向けられている状態なので、そこで緊張感が生まれて良い方向に繋がっていると思いますね」

 大阪電通大高にはいわゆるスーパー中学生と言われるような選手は入ってこない。そのため、岡野監督も中学のチームへ視察に行く時は「誰でも良いので送って下さい」というお願いの仕方をしているそうだ。無名の選手を良い意味での緊張感を持たせながら鍛え上げることで実績のある強豪私学とも渡り合えるようなチームを作りあげてきた。

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