第265回 2年間の契約不可、契約金不可…。日本の田澤ルールより厳しい「韓国版田澤ルール」の制約とは?【前編】2020年09月16日

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【目次】
[1]韓国版「田澤ルール」の全貌
[2]規約が制定された背景

 9月7日、日本球界にとって衝撃が走るニュースが起きた。なんと田澤ルールの撤廃が発表されたのだ。2008年に設定されたこのルールはNPB入り拒否の意思を示した上で海外球団と契約した際は、高卒なら3年間、大卒と社会人選手なら2年間はNPB球団と契約できないというものだ。

 このルール、日本だけではなく、韓国の野球界にもあることはご存知だろうか。それどころか、韓国のプロ野球の規約(KBO規約)にも記載されているのだ。実はその制約は日本以上に厳しいものとなっている。その事情について日本で弁護士の仕事をしながら韓国プロ野球の公認代理人としても関わっている金弘智(キム・ホンジ)さんに詳しく話を伺った。

韓国版「田澤ルール」の全貌



金弘智(キム・ホンジ)さん

 韓国のプロ野球を束ねるKBOのドラフトのルールは、KBOの政策的観点から作られたものが多い。ドラフトは一次ドラフト、二次ドラフトの2回に分けて行われるが、一次ドラフトは、主にフランチャイズ地域の高校の選手を1人優先指名(縁故指名)ができる。NPBの例でいえば、福岡ソフトバンクが福岡大大濠山下 舜平大を優先で指名できるものだといえば、わかりやすい。

 このドラフトの狙いは「出身地域の有望選手を球団が指名してスターが誕生すれば、球団の人気が上がりやすい」という狙いがある。日本はそれぞれの組織が独立しているが、KBOと高校野球は比較的密接な関係にあり、韓国の80前後の高校の生徒はプロに入ることを前提に野球活動に取り組んでいる。そのため韓国では木製バットで試合を行っている。

 一見、競技力強化のためには非常に良い制度に見えるが、トップであるKBOの強化が主眼とされているせいか、韓国ならではの課題があり、それが韓国版「田澤ルール」とも言える海外進出選手の国内復帰に対する厳しい制約につながっている。

 現行のKBO規約107条1項(海外進出選手による特例)は以下のとおりである。
1 新人選手中、韓国で高等学校以上を在学し、韓国プロ球団所属球団として登録した事実なく、外国プロ球団と選手契約を締結した選手は、外国プロ球団との当核選手契約が終了した日から2年間、KBO所属球団と選手契約を締結することはできず…(後ろに続く)。

 上記KBO規約がいう外国プロ球団は解釈上、MLB、NPB(日本野球機構)、CPBL(台湾プロ野球)のことを指すとされている

 ここまでは田澤ルールと似ている。しかし田澤ルール以上に厳しい制約は以下の通りだ。
(KBO規約107条1項の続き)
・海外プロ球団との当該選手契約が終了した日から7年間、KBO所属球団と監督及びコーチ契約を結ぶことができない。
(その他の海外進出選手の国内復帰に関するKBO規約の制約)
・復帰初年度の契約金支払い不可 最低年俸からスタート
・出身高校・大学への支援金制限 海外進出選手の出身校には5年間の支援金を一切支払い不可

 最後に紹介した支援金というのは、韓国の高校野球の競技力を強化、維持するために欠かせないもので、日本の高校野球は、一部活動の立ち位置だが、韓国では野球をする生徒が主にKBOに入ることを前提に取り組んでいるため、選手の親が支払うお金やこのような支援金が、各高校の指導者の報酬や活動費の支出にも欠かせない。

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プロフィール

河嶋宗一
副編集長 河嶋 宗一
  • 出身地:千葉県
  • ■ 現場第一主義。球児に届けたい情報とあれば日本だけでなく海外まで飛び回る。
  • ■ 副編集長、またドットコムのスカウト部長と呼ばれ、日本全国の隠れた名選手を探索。
  • ■ 幅広いアンテナと鋭い観察力でダイヤの原石を見つけだす。
  • ■ 編集部の理論派として、今日も球場に足を運ぶ。
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