みちのく便り~心の高校野球~

 1月中旬の岩手県花巻市。新たなステージに心を燃やし、黙々と木製バットを振る佐藤涼平がいた。
花巻から3時間はかかる実家の宮古市には帰らず、大学の入寮の時を花巻で待つという。授業がない入試期間でも、後輩と一緒に汗を流していた。
昨秋、高校野球の取材をしていると、「花巻東の佐藤涼平選手を意識している」という選手が数名いた。楽天イーグルスの前監督・野村克也氏が「花巻東にちっちゃいのがおるやろ。どんなボールでもファウルにして、四球で出塁する」と言い、そのプレーを絶賛したこともある。

全力でプレーする花巻東ナインの中にあって、周りより頭1つ小さい彼の全力は見る者を惹きつけた。ファウルで粘り、出塁する。その技術はもちろん、その一生懸命な姿が感動を呼び、多大な影響を与えた。

そんな彼のことは、各方面でいろいろと伝えられている。病弱だったこと。お父さんが亡くなっていること。身長が155㎝なこと。入学して間もなく、佐々木洋監督から「身長は長所だ」と言われたこと。カット打法を身につけたこと。日体大に進学し、将来は指導者を目指すこと…。彼は、ヒットを打ちたくはなかったのだろうか?どうやってカット打法を身につけて、本当に身長を長所に変えたのだろうか?そこに、どんな意味があったのだろうか?はじめから、全力で一生懸命プレーできたのだろうか?どんな3年間を送り、卒業の時を待っているのだろうか?

私なりに聞いてみたい。その気持ちだけを持って、雪降る花巻に向かったのだった。