第3回 「大会前の追い込み練習はマイナスでしかない」古島弘三医師 インタビューVol.32019年08月15日

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【目次】
[1]追い込み練習は故障のリスクが大きい
[2]完成期は高校生でもなくてもいい

 球数制限が過熱になるが、指導者の間に「投げ込んで肩を作る」という認識は依然として強い。また、高校野球でよくみられる追い込み練習。これについても古島医師は医学的な観点から否定した。

これまでの連載
手術件数年間200件、「球数制限はせざるを得ない状況になっている」古島弘三医師 インタビューVol.1
「球数制限の前に良い投球フォーム」という声に古島医師の見解は? インタビューVol.2

追い込み練習は故障のリスクが大きい



古島弘三医師

―― アマチュア野球でみられるのは、投げ込みが多いと実感いたします。例えば強化練習があると“一週間で何百球投げる”など。

古島 そういった投げ込みが必要という考えはだんだん無くなると思います。 昔は何も無かった時代にタイヤを引いたり、たくさんうさぎ跳びをしたり、水を飲むなとかいろんな理不尽なトレーニングや我慢などがあったわけですけれど、今そんな指導をしている人は少なくなりましたよね。
ということはそんなに意味が無いとか、水飲むなで熱中症になったら死ぬ可能性があるわけですよね。
 だから今ではそんなことをやっている指導者はおかしいということになっていますけど、これからは投げ込みすることが「肩、肘を壊す」という認識が当たり前なこととなっていくと思います。

 うさぎ跳びをやったら膝が悪くなると言われて、もうやらなくなりましたよね。それはオスグッドとか成長時の痛みが出るからそうなったわけで、それは肘肩も一緒なんですよ。だから早くそういうのを分って、適切な指導にシフトしていくのがいいと思います。いますぐやればいい指導者として敬意をもたれるともいます。時代は必ずそういう方向へ向きますから。ドミニカの選手は投げ込みしてなくてもビュンビュン早くていい球投げてました。

――高校を取材していて、感じることなのですが、夏の大会前、5,6月の期間中は追い込みですごく疲れた状態で練習します。あれは先生から見てあまり良くない調整法なんでしょうか?

古島 全然良くないですよ(笑)。そこもトレーニングの理論とか、人間どうやったら上手くなるとか、そういう医学的知識やトレーニング知識が皆無で、昔ながらの認識でやっているだけの話なんですよ。追い込んですぐそれが実になるかというと、ならないわけです。“超回復”といって負荷をかけた後に、休養をとることでトレーニング前よりもパフォーマンスを上げることができる。誰でも知っているはずなのに,野球の現場では大会直前となると、練習で追い込んでいないと不安になるんですね、きっと。

 せっかく二年頑張ってきた糧を直前で追い込んで疲れさせて、結局最後の夏は疲れた状態で入って、だんだん勝ちあがるうちに疲れちゃって、実力を発揮できずに終わるというパターンですよね。

 当院に来る選手によく聞きますけど、「追い込みでみんなヘトヘトです」と。逆にヘトヘトになるとケガも多くなって、結局良い選手が夏の大会に肩肘が張って痛くなってとなり、最後の最後に出られなくなってしまってというようなチームはいっぱいあります。
 逆に6月とかは自主練で、自分のペースで“自分にはあとここが足りない”とかそういう形で自主練させて、自分のペースで疲れを取りながら臨むのが良いと思います。が、普段から自主練させていないところに自主練を作っても上手くいきません。普段から自主性を持たせてせて練習しておくことも重要になってきます。

 結局、追い込んだ状態ですぐ試合に入っても、疲れが取れなければ実力、パフォーマンスが出せないんですよね。追い込んだら『休む』という期間を設けないと、実力は上がらないです。

 分かり易い例で言えば、バーベルを毎日やっていて、毎日やっていれば毎日だんだん挙げられるようになるかというと、そういうものではないですよね。毎日では疲れが溜まってきて、今まで挙げられていたものすら挙げられなくなるということになりますよね。 

 だから強くするには『休む』ということが必要です。休むというと野球人はサボると勘違いするのですが、休養することが必要なのです。特に投手は肩、ひじを休めるまとまった期間が必要です。なぜならば、見えない部分で小さな損傷というのは出てきますから、絶対にね。

 そういうのは投げない期間にある程度修復させるということが必要なんです。ずっと投げていればそういう小さな損傷が逆に大きくなるだけなので。それが一番大事な時期に痛くなって出てきてしまうということなんです。

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球数制限問題

プロフィール

河嶋宗一
副編集長 河嶋 宗一
  • 出身地:千葉県
  • ■ 現場第一主義。球児に届けたい情報とあれば日本だけでなく海外まで飛び回る。
  • ■ 副編集長、またドットコムのスカウト部長と呼ばれ、日本全国の隠れた名選手を探索。
  • ■ 幅広いアンテナと鋭い観察力でダイヤの原石を見つけだす。
  • ■ 編集部の理論派として、今日も球場に足を運ぶ。
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