
韓国代表
第1回、2回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や北京五輪の韓国は何度も日本の前に立ちふさがり、まさに宿敵、強敵という言葉が相応しかった。2009年のWBC決勝からはや14年。韓国はWBCで3大会連続で1次ラウンド敗退となった。1次ラウンドでは3位となったため、次回のWBCの出場権は確保したとはいえ、国際大会に強い韓国はすでに過去のものとなった。なぜこのような事態になったのかは、積み重ねてできたものだった。
後編では、日本と韓国の代表チーム作りの違いについて語っていく。
ヌートバーとエドマンの違い
2年前の東京五輪では北京五輪で金メダルを獲得した金卿文が監督を務めたが、メダルを逃した。もはや監督になる人物がいなくなった。今回のWBCは、KTの監督として2年前の韓国シリーズを制した李強喆(イ・ガンチョル)が、兼任で務めることになった。けれども、今回のWBCは兼任監督には負担が大きすぎた。
今大会は日韓ともカージナルスに所属するアメリカ国籍の選手を代表に加えた。韓国のエドマンにしても日本のL・ヌートバー外野手にしても、母親の祖国とはいえ東アジアは異文化だ。異文化に適応するには、本来なら時間がかかる。球団ならキャンプ、オープン戦を経ながら融合していけるが、WBCではほとんど時間がない。選手の側も、代表チームの側も事前にしっかり準備をしておく必要があった。
ヌートバーの場合、2006年に高校日本代表がホームステイをしたこともあり、日本野球に馴染みや敬意もあった。それに栗山英樹監督がしっかり適性を見極めたことも大きかった。そして合流の日には、みんなで「たっちゃん」のTシャツを着て歓迎した。やり過ぎのようにも思えるが、それくらいして丁度よかったと思う。
エドマンは母親が韓国人だし、同じ野球をする仲間。チームに打ち解けるのに時間がかからなかったようだが、どこまで深く打ち解けたかは疑問だ。
1点差で負けたオーストラリア戦は、エドマンの盗塁失敗で試合が終わった。9回裏エドマンは先頭打者で出塁している。盗塁の機会はいくらでもあった。しかし、こうした重要な場面での盗塁は、ベンチや打者と息が合うことが大事である。スタートを切れないまま2死になり、みえみえの場面でスタートしてアウトになった。批判がエドマンに集まったが、彼だけの責任ではないだろう。ただ李強喆監督にすれば、代表合宿の直前までKTのキャンプで指揮を執っており、まず自分が代表チームを把握する方が大変で、エドマンにそれほどかかっていられない。そこに兼任監督の限界があるように思う。