目次

[1]異色の経験・ホテルマン
[2]専門学校で磨いたアンガーマネージメント/高校野球の監督らしくない監督

 2018年、就任1年目にして沖学園を甲子園に導いた鬼塚佳幸監督。鬼塚監督は、まるで社長のような監督である。高校野球の監督というイメージからは程遠いところに位置していると言えるだろう。

 なぜ社長という言葉を選び、ビジネスマンと言わなかったのか。それはマネジメントのプロだからだ。ビジネスマンと言うよりは、社長という表現がぴったりである。

 では早速、鬼塚監督の指導方法をユニークなキャリアと共に紐解いていきたい。



異色の経験・ホテルマン


鬼塚佳幸監督(沖学園)

 鬼塚監督といえば、神村学園時代に副部長として春夏で計4回甲子園の出場を経験している。今回は指導者以上にユニークなキャリアに注目したい。

 鬼塚監督は「ホテルマン」を経験している。ホテルマンと野球の指導にあまり相関関係を感じないかもしれない。選手指導の話題の際に鬼塚監督は面白い言葉を語ってくれた。

 「ホテルマンはあまり怒らないですよね。ぐっと堪えますよね。言われた側の立場でも語ってしまうので、こんな言われ方されたら嫌だよなとか。そういうのを先に考えてしまいます。それがホテルでの仕事の経験とかも活きているんじゃないかと。お客さんに対して(怒りなどなど感情を表す)態度を見せないとか、相手に気持ちよく旅行期間を過ごしてほしい、楽しい時間にしてほしい、だからこちらも柔らかく接しないといけない。でも ピリッとしないといけないときもある、接し方の 「TPO」 じゃないのですけどもそういうのを学んだというかですね」

 鬼塚監督は上からものを言って、押さえつけないのである。TPO(Time:時、Place:場所、Occasion:場合)によって指摘の仕方を変えているのである。大事なポイントの1つ目である。相手の状況を汲み取る、相手の立場に立って考えるという点である。だからこそ、指導する際に怒らないのである。相手が今どのように感じるかを瞬時に考えるからである。

 また、指導するにしても、周りに相手以外の他の人がいるのか、伝える場所は適切なのかなど多くの情報を短時間で処理して対応するのである。これこそ、ホテルマン時代に数え切れないほどのお客さんと接し、一瞬の判断を多くしてきたからこそ磨かれたスキルの1つだろう。

 さらに、相手の状況を一瞬で理解した後のアウトプット力である。

「伝える時に相手の感情を読みながら、一歩通行にならないようにというのは心がけてはいます。その日の顔とか、言葉をかけてやらないといけないなとか、そういうのは見ていますし、考えますよね」

 瞬時に感じた感覚を、言葉で伝えられるこれも鬼塚監督の強みである。このホテルマン時代に磨かれたスキルは高校野球の指導者としても非常に有益なのは理解できるだろう。

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